特徴1
エビデンスに基づいた心理療法
すべての心理療法が科学的な実証性があるとは言えませんが、こちらのオフィスでは、その中でも特に科学的に実証性の高い手法をカウンセリングのベースにおいています。
科学的な実証性が高いということは、心理療法における効果の再現性が高いということです。
心の世界は、物理や医学のようにそこに物体があるわけではありません。そのために、客観的にその手法を評価することが難しく、いい加減なカウンセリングをしているセラピストが少なくないと思っています。
しかし、最近では認知行動療法のように科学的に実証された心理療法が開発されてきました。当オフィスでは、そのようなエビデンスのある心理療法をベースにおくことで、セラピストが恣意的に進めることを防ぎ、かつ、その心理療法の効果をより確実なものにするように設定しています。
例えば、最もエビデンスの高い認知療法・認知行動療法では次のように考えます。「ある状況下における感情や行動は、その状況に対する意味付け・解釈といった本人の認知によって規定される」
この認知モデルに基づいて問題を理解し、思考のパターンを変容させることで、感情や気分を回復させる心理療法です。
言い換えると「きっかけとなる出来事」→「認知」→「感情」という情報処理プロセスが脳内にあり、そのプロセスにあるエラーを修正することで、心理的な問題を解決します。
例えば、夜中に物音がしたときに、「泥棒が入った」と考えれば不安や恐怖が生じますが、「家族が帰ってきた」と考えれば安心します。
うつ気分や不安などの感情的問題を解決するためには、感情を生み出している思考の内容を変容させれば良いことになります。こうした、気分や感情が思考から生じることを認知的特異仮説といいます。
認知療法は1970年代から主にうつ病に対する治療効果をもつことが確かめられ、1980年代以降では不安障害やパニック障害、人格障害、統合失調症などにまで幅広く適用されるようになりました。
また、当初は主に思考の問題に焦点が当てられていたため認知療法と呼ばれていましたが、1990年代に入って行動的技法が取り入れられ、認知行動療法と呼ばれるようになりました。
認知行動療法の特徴の一つは、薬物療法と比較検討を通してその有効性を科学的に確立したことにあります。その科学的有効性の高さのゆえに、認知行動療法は心理療法における世界標準となっています。
最近では、認知や行動の内容だけではなく、認知や行動のプロセスにも目が向けられて、マインドフルネスやACT、メタ認知療法、スキーマ療法などの新たな技法が開発されています。
また、感情的問題を異常なものとせず、それは日常的に考えている普通の内容によってもたらされると考えることで、それまでの無意識を仮定した特殊な理論でセラピストが解釈する心理療法とは異なり、常識的な視点(コモンセンス)から問題を理解し、それをセラピストとご相談者と共有することが原則です。
自らの心理的問題を普通のこととして理解していく点は、認知行動療法の大きな特徴です。
そして、間違いを正すのではなく、固定化したパターンから脱却して、認知や行動を柔軟で適応的な状態にすることが大きな目標です。ときに、否定的な思考であっても、それは現実的であることがあります。そのときは、問題となる状況そのものを解決するための対処技法(ストレスコーピング)の向上に取り組むことができます。
このため、認知行動療法を練習することは、自らをコントロールするスキルを身につけることになります。これは、自らが自分の治療者となることを意味します。それゆえに、認知行動療法はセルフヘルプの心理療法と呼ばれます。
また、認知行動療法ではご相談される方と協同関係をもって問題に取り組みます。支持的カウンセリングの受け手の役割に徹するのではなく、無意識を解釈する者の役割を担うわけでもありません。役割と責任をご相談者と分担し、チームとして同じ目線で問題の解決にあたります。
そのため、時にご相談者が問題解決の主導権を担うこともあります。
以上に述べたことが、世界中の科学的な検証の積み重ねの上で見出されたことです。当オフィスでは、この認知行動療法の進め方をベースに、多様な心理療法を統合的に実践しています。それによって、多様で複雑な心理的問題を解決へと導くことが可能になっています。
当オフィスでは、特にご相談される方の心理的メカニズムを簡潔にまとめることに注力しています。
つまり、心の地図を描き出すことです。この心の地図があれば、心理的問題にアプローチする方法を見つけ出すことが、最終的には自己調整しながらよりよい人生を歩んでいけるようになります。当オフィスではそのような手伝いをさせて頂いています。
特徴2
トラウマへの高い専門性
これまでの心理臨床の実践のなかで、病状の長期化という問題の背景にトラウマ(心的外傷)が存在していることが少なくありません。例えば、外敵に襲われた時に闘うことも逃げることもできない状況では、生物は身体を凍りつかせることで危機的状況に対応しようとします。その時は気分が落ち込み、頭も回転しなくなり、体も重くなってきます。
強いストレス体験をした時に、この凍りつきの反応が生じ、それをうつ状態と診断されることがあります。この場合、うつ症状の治療を続けても、凍りつきの反応を解除しなければ、うつ症状は解消せず、病状が長期化します。
こうした問題があるため、トラウマ治療の心理療法を積極的に取り入れています。トラウマの心理療法としては、認知行動療法であれば暴露療法があります。眼球運動でトラウマを処理するEMDRや目の位置でトラウマの身体反応を解消するブレインスポッティングもあります。
また、インナーチャイルドなどトラウマを抱えた自己の一部(パーツ)のケアをする自我状態療法、インナーチャイルドを癒し歳養育するためのスキーマ療法、身体を使ってトラウマ時の未完了の動きを完了させることでトラウマを処理するソマティック・エクスペリエンス、分裂した人格を一つにまとめるUSPTなど、トラウマを処理するための心理療法があります。
これらの複数の技法を、エビデンスに基づいた手続で統合的に使っていくことができるのが当オフィスの大きな特徴です。
特徴3
マイナスからゼロへ、ゼロからプラスへ
苦難に直面してはじめて、人は自分自身の内面を深くみつめ、生きる上で本当に大切なものは何かを見いだす。逆境がその人の生まれもった資質を目覚めさせ、喜びに満ちた新たな人生へと導く。
そのように感じることがこれまでの臨床経験のなかで幾多もありました。医療現場では、うつ気分や不安などの問題となる精神症状が解消されれば終了となります。
しかし、症状の解消のみならず、自分という存在に向き合う作業も続けていくと、思いもよらない発見があります。
人は悲しみを知ることで、思いやりや優しさの大切さに気がつきます。いままで当たり前だったことが、かけがえのないものであったことに気づくことができると、幸福感を深く味わうことのできる人生を作ることができます。
それゆえに、当オフィスは問題の解決だけではなく安心や喜び、愛情などの幸福感(well-being)の向上も目標としていることが特徴の一つになっています。
辛く苦しい日々を過ごされてきた方が、心理療法や心理カウンセリングを通して、良い体験を重ねて人生を送っていけるようになるお手伝いをさせて頂きます。